母「たつ、お前は自分の腕に溺れて、肝心なもんを見失のうててた。
これや、これのこもってへん料理は、素人さんかてわかる。
そやけどな、これさえあったら、例え中国産のふぐでも、
天然もんに引けをとらへんもんになる。ちがうか?。
板前は腕やない、心や。」
…
井「萬田はん言うたな。こっちが出せる金は3,500。
それ以上ビタ一文払うつもりはない。
納得できん言うなら、あそこが銀行に差し押さえくろうて、
競売にかかるのを待つだけや。
粘ったところで、半年ももたんやろ。」
萬「そういうことなら、こっちも覚悟を決めさして貰いまっさ。
あの土地福田から買うて、居座らして貰うまでや。」
…
井「わかった、ほな払ったるわい。
ただし、9,900や。」
上「きったーーー、アニキ、来ましたで。
魂心堂、怒涛のディスカウント攻撃や。」
井「9,900やったら、俺の面子も立つ。
どや、萬田はん。」
銀「この萬田が一億言うたら一億や。
びた一文まかりまへんな。
世の中には、ディスカウントでけんもんもあるっちゅうことを、
あんたもよう覚えときなはれ。」
このやり取りには、複数の含蓄に富んだ言葉があると
思わずにはいられません。
言うたもん勝ちになりがちな今の社会。
物的に裕福になっても、
心が貧しくなってしまっては元も子もない、
そんな気がしてなりません。